エンドレスババー

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 婆との会話はイラつきながらも面白かった。

週2回のディサービスが待ち遠しくてしかたのない婆は、ソファーの自分の定位置の横に今すぐにでもディサービスに行ける準備してある。
尿漏れ対策おパンツ3枚と、なぜか薄目のフツーおパンツ2枚、腰の辺りに親指大の穴の開いたメリヤスシミーズ、胸元のレースが男心をくすぐる灰色婆シャツ
それとバスタオル、フェイスタオル…
この袋を一日5〜6回、開けては全部出してたたみなおすのが日課だ。
パンツなんてどうたたんでも、一枚出した時点で他のものがグチャグチャになるのに…
たたみなおして満足した婆は
「デーサービスの人が迎えにくる時間?」 と訊く
「きょうじゃないの、あさって!」
「ふゥ〜ん…そっか」

「アンタァ〜、M原の家 (婆の母が住んでいた戦前の家) の井戸 どうなった?」
「井戸なんか見たこともねェヨ。」
「あったんだよォ、ツルベの…こーするやつ」 と、綱を手繰りあげるカッコして見せた。
そんなものあったら、今頃M原の広報誌に載ってるよ。
『次世代に残したい昭和の原風景』なんつって
「ないのッ!オバーさんとこは区画整理でな〜〜んにもなくなったの!原っぱなの」
「そォかァ〜…アキラ (男ヤモメの弟) は?アキラは一人で住んでるんだべ?」
「住んでるけど、6帖一間 (ウソ) なの。母さんアキラと抱き合って寝るか?」
婆、なぜか照れたように笑い

「そっか…ンじゃさ、あの井戸はどうなってる?」
「井戸なんかないッ!!原っぱなったの。区画整理でなんにもなくなったの」
「ふゥ〜〜ん…アキラはどうしてる? あぁ、アキラと住むかな」
「アキラは6帖一間に住んでるの。抱き合って寝る?」
「そォかァ…あッ!タイヘンだ!デーサービスだ!!」
「デーサービスはあさって!きょうじゃないのッ」
「あぁ、よかった (ホッ) ンじゃ、袋の中のを忘れ物ないように調べておかなくちゃ…」
と、また袋を開けて、広げてたたんで… (^^;)
「デーサービスがいつなんだかわがんねくてサ、アンタァ カレンダーさ○ (マル) つけでけろ」
「マルはついてンだよ、でもマルつけた日がきょうか、あしたか…わかる?カレンダー見てみな。ほら…3に赤いマルがついてるでしょ?あのマルがいつだかわかる?」
婆、集中し、クウを見つめて…考える

「わかんね」
「だから、 『あしたデーサービスだよ』 って教えてくれるんだから…それから支度しても遅くないんだヨ。わかった?」
「…… (-“-;)」

最後の 「わかった?」 にプライドが傷ついたらしい (≧m≦) 

夕方にはノドがイガイガした。